《MUMEI》

結局、なんの情報も得られないまま、私たちは帰ることにした。


校門へと向かいながら、



「…どーすればいいんだろうな…」



呟くように言う椎名くん。



「…ほんとだね…何の手懸りも―…」



言いかけた私の足元を、白い影が横切った。



「どした??」



椎名くんが問いかけてくる。



「いや、今―…」



白い影が向かった方向に目をやると、植え込みがガサッと音を立てて、



…白くて長い尻尾が草陰に消えた。



―…しっぽ??



「…あれ、」



椎名くんが声を上げる。



「今の、ネコだったよな??」



それから、



「…おれ、今のネコ、昨日見た」



と、言った。



「…え??」



私が首を傾げると、



「だから、今通ったネコ、昨日も学校にいたんだって」



と、椎名くんは説明した。



「それが、どうかしたの??」



私が訊ねると、



「…そう言われると、別にどうもしてねーとしか言えないけどさ…」



そう言って、顔をしかめた。



「―…なんか、引っかかるんだよなあ…」



私は、しっぽが消えた植え込みに視線を戻した。



植え込みは、知らん顔でそこにあった。



「まあいっか。帰ろーぜ」



椎名くんの言葉に頷いて、再び歩き始めた。

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