《MUMEI》

「首、出せ。」

氷室君の無駄の無い言葉が僕には伝わり難い。

「言われたらすぐやる!」

そして僕は氷室君が急かす時に若干手を挙げる仕草をする度、身が縮んだ。

「ギャア……ごめんなさい」

伸びたままの睫毛を後ろに引っ張られた。
瞼が引きちぎれてしまうような痛みだ。
喉元を突き出すように氷室君に見せる。

氷室君は首に何かを巻き付けてきて擽ったい。
何かが首に付いたけれどそれが睫毛が邪魔なので見えないので常備している“毛切りセット”のうちの睫毛鋏で切り揃えた。

「鍵付きの首輪だ。
鍵は主人である俺が持っていてやるから。」

氷室君は小さな鍵らしき物を首に下げた。

「あの、氷室君……?」




――――――――バシィン

頬に強烈な張り手を喰らった。

「あぅっ」

反動で吹っ飛んだ。

「ペット風情が主人に対等な口をきくな!」

凄みがきいている、氷室君……瞳が本気だ。

「…………は、はい  ひ、 氷室様……」

慣れない言い方も手伝って震えが咽から止まらない。

「それで良い」

なんて怖いんだろう。
目が笑っていない、器用に口許だけ上がっている。

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