《MUMEI》
第十八話:TEAM総力戦
 TEAM本社は今日も社長がだれている。
 仕事の量は半端じゃない癖して、
 相変わらず社員達をあきれさせるほどの気の抜けた面をして、
 書類に今にも涎をたらしそうな状態で寝ている。
 しかし、それでも一点の汚れすら作らないのは、この男のなせる業なのか・・・・

「社長! いい加減に起きて仕事してくださいよ!」
「んあ?」

 社員の智子の呼びかけに声だけ発するものの、
 義臣は判子一つすら押しはしない。

「本当! 夢乃さんがいないと全く仕事しないんだから!」
「だな。せめて副社長あたりが戻ってきてくれるといいんだが・・・・」
「それはいやよ。サボれないもん」

 義臣はふざけて答えた。
 この男はディスクワークがとことん嫌いである。
 しかし、それは困ると社員達が強制的に縛り付けるのだ。
 今日も逃げ出さないように強力な術で椅子から動かさないようにしているわけだが、
 それはそれで良いといわんばかりに、
 義臣は寝こけているわけである。

「あ〜あ。夢乃さん早く帰ってこないかな」

 愛妻のことを相変わらず愛しく思うが、
 次の瞬間、義臣は一気に表情を変えた!

「翡翠か!」

 強力な術もなんのその、義臣は一瞬のうちにその場から消えた。


 その頃・・・・・

「氷堂さん!」
「ああ! こっちだ!」

 快達も翡翠の異変に気づいた。
 そして、急いで翡翠の元に駆けつけるとそこには惨劇が広がっていた。

「紫織!」
「救護班! 急げ!」

 紫織が頭から血を流して倒れている。
 TEAMのバスター達は義臣の視線一つで次々と動き出していた。

「氷堂、翡翠はどうした?」
「すみません、社長! 私がうかつでした! 翡翠を人質役にしていたので!」

 氷堂は頭を下げる。
 しかし、義臣はそれを責めなかった。

「いや、お前の術は決して翡翠を動かせないものじゃない。
 あいつの実力なら一分で快達に合流できたはずだ」

 何も話していないのに、義臣は現場一つ見ただけで全て把握していた。

「父さん! 俺が!」
「お前達は心配せずに紫織の傍にいろ。
 翡翠の方は俺達が責任を持って取り戻す」
「だけど!」
「快! これは命令だ。
 バスターにとって隊長命令は絶対だと教えたはずだ。
 氷堂、お前はすぐに調査に当たれ。
 おそらくこの術はあいつだ」

 それだけで氷堂はバスターの表情へと変わった。
 そして、瞬身で消えたのである。

「時枝に連絡は入れたか?」
「はい! いつでもいけるとのことです」

 さっきまで説教をしていた智子も優秀な秘書と化していた。
 これが「TEAM」だ。

「よし、全員に言っとけ」
 
 義臣は全てを威圧する力を解き放つ。

「うちに喧嘩を売った馬鹿どもに容赦はするな。『ブラッド』を全力で叩く!」

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