《MUMEI》 サトル「ありがとうございました―」 店員のとりあえずの言葉が背中で響いている。 「今日は大漁だな」 サトルは微笑んでいた。 右手に提げたビニール袋の中には溢れんばかりにゲームソフトが詰め込まれていた。 サトルはそのゲームソフトの塊を見てやはり笑いをこらえられなかった。 「くっくっくっく、これで2ヵ月は退屈しないな」 不思議そうにサトルを見るおばさんと目が合い、サトルはとっさに顔を引き締めた。 もしかしたらこうしてゲームを買って帰るこの時がサトルにとっては一番幸せなのかもしれない。ゲームをやりだせばサトルを満足させられるそれはほとんどないからである。 期待と不安を右手に携えてサトルは家路に着いた。 「サトル、またゲームか?」 サトルは母親を無視して2階に上がった。サトルはわかっていた。自分が家の中で煙たがられていることを。その理由が自分が流行りのニートであることにも気付いていた。しかしゲームをやめる気になれなかった。 小さい頃から友達はおらず、ゲームばかりしていた。サトルはゲームしか遊び相手を知らなかったのである。 もちろん働く気が無いわけではない。仕事があればどれだけきつい仕事でもやるつもりはある。 次へ |
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