《MUMEI》

◆◇◆

「待てー」

「待て待てぇー」

 逃げ回る黒手毬を、三匹が追いかける。

 夜桜は黒手毬がひっくり返る度にそれを起こしてやるのだが、何度も繰り返す内に疲れてきたのか、時折頭を押さえている。

 又しても黒手毬はひっくり返ったが、夜桜は既に目眩がし始めていた。

 だが黒手毬は何者かの手に掬い上げられていた。

「妖の相手も程々にしろ」

 夜桜は顔を上げて目を見開く。

 黒手毬を掬い上げたのは、彩貴だった。

◆◇◆

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