《MUMEI》

タクシーで揺られ、割と良いマンションに着く。

「えーと、カードキー……」

「なんか落ちたけど」

「それぇー。」

カードキーで入るのは初めてだ。
エレベーターで17階ってかなりの高さじゃないか。

見知らぬ男にいきなり部屋に招かれるとは……。

この男を明るい所で見てみると意外と綺麗な顔立ちだった。

黒々とした髪や瞳を持ち手足はすらりとしている。

「17階は仕事場兼住まい……。もう俺独りのだけどね。」

一つ一つ階が上がる毎に泣きそうになっている。



広い部屋だ。

まだ箱積みの段ボールが幾つもあった。
パソコンが数台乗っていて仕事場になっている。
更に奥へ誘導された。


「えーと、この部屋に多分服入ってる……あり?無いや。
いいかバスローブで」

寝室のようである。
段ボールの中からバスローブを引っ張り出した。

「服、それじゃないの?」

段ボールの外側に衣服と書かれている。

「………………面倒くさっ」

視線を一瞬段ボールに送ったが、一瞥した。
バスローブを脇に抱えて洗面所に引っ張り込まれる。真横に風呂場がある。

「うーと、汚ねぇからコレ、捨て な。」

強引に服を鋏でジャキジャキに切り刻まれた。
俺の衣服だった切れ端はビニール袋に詰められる。

「持ち帰る?」

ビニール袋を差し出された。

「要るか」

後で絶対に弁償させてやる。

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