《MUMEI》 紫藤家の憂鬱お盆休みが終わり、通常営業を再開した夜。 「ハァ〜」×3 『クローバー』のカウンターには、紫藤家の三人ー 愛理さんと、そのいとこの有理さんと理美さんが並んで座っていた。 「珍しいわね、ため息なんて」 カウンター越しに咲子さんが声をかけた。 (本当に、珍しいな) 厨房で揚げ出し豆腐を仕上げながら、私も同じ事を考えていた。 三人は、たまに『クローバー』に飲みに来るが、いつもはもっと賑やかで楽しそうだった。 「ちょっと…いろいろ、あって。 咲子さん、話、聞いてもらえませんか?」 愛理さんの言葉に、咲子さんはチラッと店内を見渡した。 テーブル席には、二組のお客がまだ残っていた。 「蝶子ちゃん、あっち頼める?」 「はい」 私は仕上がった揚げ出し豆腐を直接テーブル席まで運んだ。 「空いたお皿、お下げしますね。 あと、お茶漬けにしようと思いますが、どうですか?」 「ん〜、そうだな」 サラリーマン風の男性達はチラッと腕時計を見つめた。 「うん、それでいいや。ついでにお新香ももらえる?」 「わかりました」 私は空いた器を持って厨房に戻った。 前へ |次へ |
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