《MUMEI》
第十九話:戦う決意
 「白真は紫織の傍から離れようとしない」。
 それが義臣の防御策だった。
 ただし、自分の息子は思っていたよりも行動的で、
 思っていたよりもバスターとしての血が騒いでいたのだ。

「快、とりあえず紫織は一命を取り留めたようだ」
「そうか、よかった」

 翔が快達に告げに来た。
 しかし、快はあまりホッとしていないようだ。
 自分の仲間の翡翠はまだ見つからないのだから・・・・

「お前、さっきから何してるんだよ」

 いくつもの書類を引っ張り出して、快はなにやら調べ物をしている。
 それに便乗するかのように掃除屋リストを修もパソコンで検索していた。

「調べてるんだ。翡翠をさらった『ブラッド』って奴等を」
「なっ! お前、おじさんから言われただろ! 『絶対動くな』って!」
「翡翠がさらわれてるんだぞ! 仲間なのに黙ってみてられるか!」

 それは修も同じだった。
 だからこそ快を手伝っていたのだ。

「あの縄、力を送ればどんどん締まるような術をかけていた。
 そんな高度な術、一端のバスターにできるわけがないんだ。少なくとも親父レベルだ」
「だったらなおさら!」
「無駄だよ、翔」

 白真もやってきた。そして、片っ端からファイルを見ていく。

「紫織もやられてるんだ。
 おじさんがなんと言おうと俺達も戦線に加わる。
 だけど、足手まといになるつもりもない。
 だから快ちゃんは調べてるんだろ、奴らのこと」

 そのとおりだった。しかし、翔は反対する。

「それでも俺は反対だ。
 下手したら俺達がやられるんだぞ」
「やられないよ。俺達は『TEAM』なんだ。
 翡翠を取り戻すためなら絶対死なない」

 そして快は一つのファイルを机の上に置いた。
 それは「ブラッド」の本社だった。
 少なくともこの掃除屋の土地より広い。

「翡翠はおそらくここにいる」

 快が指差したのは廃墟となってる倉庫だった。

「相手も『TEAM』が来ると分かっていて人質を本部内に入れたりはしない。
 仮に入れたとしても、内部での戦いはこっちのほうが確実に有利だ。
 父さんが来ることだって予測してるんだろうからな。
 万が一本部が崩壊した場合、掃除屋としての機能が戻るのにも時間がかかるし」
「なるほど。だったら、ある程度の広さを持つ場所に翡翠を置いて、
 そこでおじさんを始末しようって魂胆もありそうだな。
 結界とかも張ってそうだし」

 修は「ブラッド社員名簿」を見つけ出した。
 どいつも猛者ばかりで、並みの使い手など皆無に等しそうだ。

「だが、侵入法はどうする? 赤外線が多数外に張り巡らされているぜ?」
「俺が切るよ」

 翔が申し出た。

「俺の戦闘タイプなら問題ないだろう」
「・・・・父さんに逆らうのか?」
「ああ、隊長命令は絶対だしな」

 四人の覚悟は決まった。
 全ては翡翠を助けるために・・・・・

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