《MUMEI》
第二十一話:侵入者
 ブラッド本社。
 そこにいたのは快達だけではなかった。
 暗室にほんのり灯る明かりの中に、一人で侵入したものがいたのである。

「動くな!」

 その暗室の主は、首筋に冷たい刃が当たるのを感じた。
 そして、その侵入者の名を言ったのである。

「何年ぶりだ? 篠原義臣・・・・」

 低い男の声。葉巻を持った手が男の顔に少し明かりをともした。
 左目に付いた斬傷。それはかつて義臣がつけたものだった・・・・

「さすがに覚えてねぇな。
 だが、一体何のつもりだ? うちの風野翡翠を誘拐するなんてよ」

 いきなり本題に入った。
 多少なりとも義臣は焦っていた。
 さっきから感じていた嫌な予感が現実になりそうで・・・・

「知らんな。そんな指令を出した覚えなどない」
「そうか。ならば今回の俺達の標的名だけを言え。
 それぐらいは知っているだろう?」

 さらに首筋に刃が近づけられる。
 しかし、男はにやりと笑い、

「それも教えるつもりはない。
 かつてのお前になら教えてやったかもしれんがな」
「そうか、ならば仕方がない」

 次の瞬間、暗室が一気に吹き飛んだ!

「宣戦布告だ。俺を本気にさせた報いを受けろ!」
「・・・・くっ! はははははは!!!」

 男は高笑いを上げる。

「大いに結構だ! だが、急いだ方がいいだろうな。
 お前の焦りの元凶達はすでに我が本社に攻め込んでいる。
 そこには幹部を配置しておいた。
 さすがの『TEAM』もおしまいだ・・・・!!」

 すべてを言い終わる前に義臣は男の喉下を切り裂いた!
 そして、男はさらさらと砂になる。

「ダミーにもう用はねぇよ。氷堂、智子!」
「はっ!」

 二人の幹部が姿を現した。

「お前達は快のところへ行け! 俺はあの馬鹿を追いかける!」
「社長! あいつのところへは俺が・・・・!」

 二人は義臣の空気に完全に威圧された!
 目を見てしまえば間違いなく動けなくなる。
「お前の親父は半端なく強い。やれるのは俺だけだ。
 お前の気持ちはわからないこともないが、今は快達のところへ行き翡翠を取り戻すのが任務だ。だから行け!」

 その言葉と同時に二人は一気に消えた。

「さて、氷堂尊氏はどこにいる・・・・」

 義臣は全神経を集中させた。そして気づいたのである。

「・・・・!! あの野郎!!」

 義臣はすぐさまその場から消えた。
 最悪な事態は、刻々と迫っていたのである・・・・

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