《MUMEI》
第二十三話:氷堂尊氏
「快ちゃん! 修ちゃんは達大丈夫なのか?」
「ああ、修のおじさんが行ってくれてる。
 俺達は翡翠のところへ急ぐんだ!」

 確実に近づいてくる翡翠のいる倉庫。
 翡翠が確実に生きていることは感じている。
 それと同時に、恐ろしい力も近づいていると感じていた。

「白、倉庫内に入ったらすぐに翡翠を連れて脱出だ。
 手を出したら負けだと思え」
「うん、あいつらのファイル見ただけで分かったよ。
 TEAMと互角に戦える掃除屋が存在してたなんて思いたくもなかったけど・・・・」

 「氷堂尊氏」の名前が二人には浮かんでいた。
 ブラッド本社の社長で、その力は義臣でさえ苦戦するかもしれない相手だ。
 自分達が到底かなわないと自覚するしかなかった。

「あそこか! 急げ!」

 快と白真は倉庫の扉を蹴破り、柱に括り付けられた翡翠を発見した。

「翡翠!」
「快ちゃん! 白ちゃん!」

 ようやく出会えた。
 ようやく助けに来てくれた仲間に翡翠は涙を流した。

「待ってろ! すぐにこのロープ切ってやるからな!」

 腰から取り出したナイフで快はロープを断ち切る。

「よし! すぐにここから・・・・!」

 空気が威圧された。
 体の力が全て抜けた。
 動けないことだけが確かになった。
 そして聞こえた低い声・・・・・

「ようこそ、篠原快。会ってみたかったよ」

 そこに登場したのは、氷堂尊氏だった。

「氷・・・・堂・・・・!」

 声が自分でもよく出たと思った。
 恐怖なんて言葉でこの男を表現してはいけない。
 生々しい左目の傷に黒ずくめの格好、
 そして靴に光る金装飾が自分を呪い殺してしまいそうだ。

「ほう、やはりちゃんと調べることは調べてきたようだな。
 父親に似て優秀なようだ」

 笑みが翡翠の涙を誘った。
 自分を攫い、紫織に傷覆わせた男。
 それは間違いなく目の前にいる男だ。

「快・・・・ちゃん・・・・! 時空魔法で飛んで!
 早く皆のところへ!」
「!!」

 翡翠の言葉で目が覚めた。
 快は翡翠と白真を引き寄せ、その場から飛ぼうとしたが、

「なっ!」

 飛ぶことが出来ない。
 それ以前に魔法がうまく使えない!

「まだ帰っていいとは言っていないだろう?
 私は君達を殺すつもりはないよ。
 これからの掃除屋界でも新しい力は必要だ。
 だが、返答しだいでは命を握ってやるつもりだが・・・・」

 脅しではない!
 それだけが事実だった・・・・

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