《MUMEI》 「いいじゃない、今すぐにでも結婚しちゃえば」 (結婚?) 咲子さんの言葉に私は思わず聞き耳を立てた。 お新香は切るだけだし、お茶漬けも簡単だから、すぐに仕上がった。 厨房からホールに出る時、私はチラッとカウンターの三人を見た。 頭を抱えていたのは、愛理さんだった。 (愛理さんが、結婚?) …となると、相手は当然恋人の相田さんだ。 相田さんと愛理さんは、付き合って一年以上経つ。 (何か、問題あるのかな?) サラリーマンにお茶漬けとお新香を出しながら、私がそんな事を考えていると… 「ちょっとすみません」 「あ、はい」 隣のテーブル席の若い男性に声をかけられた。 男性は、恋人らしき女性を連れていた。 「何かデザートってあります?」 「えっと…、ヨーグルトアイスか、グレープフルーツのゼリーならありますけど…」 私の言葉に、男性が『どうする?』と女性に質問した。 「じゃあ、ゼリー下さい」 「はい」 「あ、俺、コーヒーね」 「はい」 私はまた厨房に向かって歩き出した。 「すみません、咲子さん、コーヒー一つお願いします」 「いいわよ」 前へ |次へ |
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