《MUMEI》 「えっと、私も先に上がった方がいいですか?」 私が質問すると、咲子さんが『どうする?』と三人に質問した。 「…蝶子は口が固いから、大丈夫だし、別にいいわよ」 愛理さんの言葉に、有理さんと理美さんは、『愛理さんがいいなら…』と、言った。 「じゃ、片付けはいいから…座って」 「あの〜、水に浸けるだけ、今したいんですけど…」 私が申し訳なさそうに言うと、咲子さんが笑いながら『いいわよ』と言った。 私は急いで食器をシンクに入れ、水に浸けた。 「すみませんでした」 「…多分、『赤岩』が求める理想の嫁って、こうなのよね」 「え?」 「でもなあ…」 理美さんは私から視線をそらし、自分の爪を見つめた。 理美さんの爪は、ブルーのグラデーションのネイルの上に、細かい石が貼られていて、キラキラと輝いていた。 「私、こうだしなあ…」 それは、ネイリストとしてはふさわしい爪だが、『赤岩』には、飲食店にはふさわしくない爪だった。 「別に、『手伝え』って言われたわけじゃないんでしょ?」 「でも、律子さんが手伝ってるの、…見てると…」 理美さんはまた大きくため息をついた。 前へ |次へ |
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