《MUMEI》

「氏原君の下の名前を教えて呉れないかな?」

氏原以外の名前を浮かばなく林太郎は戸惑った。

「私のような者が影近様に名前を覚えて貰うなんて」

よく、見目麗しい売り子の娘は笑うことで許しを得ていたのを林太郎は思い出し実践してみた。

「り……律郎です。
影近様、律郎がお部屋の方に御案内致しましょう。」

実朝の方が冷静を保てていない。
林太郎は誉の荷物を持ち、先導する。

「……律郎か、若い使用人は好ましいな。」

誉は林太郎の襟足を爪先で遊ばせてくる。

「――――――お戯れを。」

笑顔で平静を保っていたが、林太郎は心身共に危機感を感じた。
彼の触れた所処から首の裏側がざわつく。

林太郎は見晴らしや日当たり、家具調度から最高級の部屋へ誘導する。

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