《MUMEI》

『おーい!ボーっと、しとったらあかんで!』




『分かってるよ。
ちゃんとやってるでしょ!何よ?偉そうに!』




『いや〜すまん。すまん。やっと念願の店が出来る思たら、気合い入ってしもてん!』




『ま〜分かるけどね。
25歳で自分の店なんて本当、凄いもん…。
念願って?ずっと雑貨屋さんしたかったの?』




『…雑貨屋!?
あ〜!!表の看板か?
あれはウソや(笑)。
雑貨屋って書いとったら、とりあえず間違いないと思ってな!!』




『…ウソって!?
じゃ〜何屋さんなの?』




『う〜ん。難しいな…。
何やろ?“なんでも屋”みたいなもんかな…?
俺が“イイ”と思ったもんを売る!!それだけや!
せやで、雑貨はもちろん、ギターも服も売るで!』




『…へぇ〜。』




ももたの目は幼稚園の頃、“俺はウルトラマンになる!”と宣言していたのを思い出させるくらい、キラキラと輝いていた。




『ももたは、昔と変わらないね(笑)!
なんか子供みたいに、はしゃいじゃって楽しそう。』



『そらっ。楽しいもん!
咲良は今、楽しないんか?』




『う〜ん…。どうだろ?
…わかんない。』




『わからんってどうゆうこっちゃ?
あんな〜咲良!人生は一回きりやねんぞ?
悩んでる時間がもったいなでしゃーないわ。』




『…別に。…悩んでなんてないし!そんなこと言って、ももたは、今まで一度も悩んだ事ないの?』




『ないな!!』




『ふ〜ん。単純なんだね?彼女とかいないでしょ?』



『あほ!おるわ。
お前より数倍…いやっ。数千倍べっぴんさんの彼女がな!』




『へぇ〜。私だって、ももたより数億倍カッコいい彼氏がいるし!』




私たちの幼稚な口喧嘩は、しばらく続いた…。




ピロピロリーンッ♪




『…メールだ。』




私の携帯が鳴り、言い合いは一時中断…。




┏━━━━━━━━━┓
┃今、こっちの家を出┃
┃たから、6時には着┃
┃くと思う。    ┃
┃咲良ん家からは少し┃
┃遠いけど[アクア]┃
┃って店で待ってる。┃
┗━━━━━━━━━┛





“…吉沢さんだ。”




私が、ちらっと時計を見たのを知ってか…知らずか…また、ももたの憎まれ口が始まった…。




『あ〜しんど。
お前に手伝ってもろたら、余計疲れたわ!
もう、帰り!!』




『は〜!?
(余計疲れただとぉ〜!)
言われなくても帰るわよ。もう絶対手伝ってやんないからね!』




『おう!また暇になったらいつでも来い。こき使たるで(笑)。』




“ふんっ!知らない!”




私は、ももたをシカトしてさっさと帰った…。




『咲良っ!!今日はおおきに!助かったわ〜!』




私の去り際に、調子のいいことを言う、ももた…。




素直に“ありがとう”って言えないのかな…。
あの変人は…(笑)




私は、吉沢さんに会うための“勇気”を貰った気分だった…。




ももたの店の手伝いで、汚れてしまった服を着替えに、急いで家に帰る。




『吉沢さんに会える〜!』




小さな声で呟きながら、待ち合わせの[アクア]に着いた。

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