《MUMEI》

「お、お邪魔します…」



恐る恐る、蓬田が玄関に入ってきた。



「こんばんは」



にっこりと、蓬田ママが微笑む。


蓬田は、少し哀しそうな、でも心底嬉しそうな笑みを浮かべて、こんばんはと頭を下げた。



「かなめを、送ってきてくれたのね。ありがとう」


「…あ、えっと…」



答えあぐねている蓬田。


ふいに、



『きゃん!!』



という鳴き声がして、キッチンからものすごい勢いでゴジラが駆けてきた。



「あら、ゴジラ!あなた寝たんじゃなかったの??
かなめの声で起きたのかしら―…」



ゴジラはおれを無視して、一直線に蓬田の元へ。



「…あら!!」



蓬田ママは、尻尾をちぎれんばかりに振りまくっているゴジラを見て、驚いた顔をした。



「…ゴジラがかなめ以外の人に―…しかも男の子に、こんなに懐いてるの初めて見たわ!!」



ゴジラは、小さな体をいっぱいに使って蓬田への愛情を表現して、
蓬田も、いっぱいの優しさでそれに応えていた。



幸せそうだな。



愛おしそうにゴジラを抱き締める蓬田を見て、自然に笑みが零れた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫