《MUMEI》

「…じゃあ、わた…っ、おれは、これで」



ひとしきりゴジラとの再会を喜んだ後、蓬田は腰を上げた。


ゴジラが、名残惜しそうな瞳で蓬田を見上げ、くんくんと鳴いた。



「あら、もう帰っちゃうの??お茶でも―…」


「いや、もう遅いんで―…」


「…そう、残念ね…
あ、ちょっと待っててもらえる??」



蓬田ママは、思いついたようにそう言うと、キッチンへと入っていった。



「…ありがと、ね」



蓬田が呟く。



「へ??」



おれが顔を上げると、蓬田はまた少し泣きそうな顔をしていた。



「うわ、だから泣くなって!!」


「…だって、だってママにもゴジラにも…会いたかったから」


「わかったから、泣くな!!
…お互い様だろ、おれも空手のこと頼んじゃったし」


「へへ、―…そうだね」



洟をずずっとすすって、蓬田は微笑んだ。

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