《MUMEI》

「椎名くん、これ!」



言いながら、蓬田ママが戻ってきた。
手には、小さな箱が。



「はい!!」



その小さな箱を蓬田に差し出す蓬田ママ。



「これね、おばちゃんが焼いたケーキなんだけど…」


「………」


「椎名くんは、甘いもの好きだったよね??」


「………は、い」


「―…じゃあ、お口に合うかは分からないけど、ご家族で食べてみてね」



蓬田は、こくんと頷いてケーキの箱を受け取ると、



「…ありがとうございました!!」



ぺこりとお辞儀をして、逃げるように玄関を出て行った。



「おい!!」



思わず、おれも後を追って玄関を飛び出した。



―…零れ落ちた涙を、



蓬田の涙を、見てしまったからだ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫