《MUMEI》 「椎名くん、これ!」 言いながら、蓬田ママが戻ってきた。 手には、小さな箱が。 「はい!!」 その小さな箱を蓬田に差し出す蓬田ママ。 「これね、おばちゃんが焼いたケーキなんだけど…」 「………」 「椎名くんは、甘いもの好きだったよね??」 「………は、い」 「―…じゃあ、お口に合うかは分からないけど、ご家族で食べてみてね」 蓬田は、こくんと頷いてケーキの箱を受け取ると、 「…ありがとうございました!!」 ぺこりとお辞儀をして、逃げるように玄関を出て行った。 「おい!!」 思わず、おれも後を追って玄関を飛び出した。 ―…零れ落ちた涙を、 蓬田の涙を、見てしまったからだ。 前へ |次へ |
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