《MUMEI》 = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = 「どうも、ありがとうございました」 花束をお客さんに渡してカウンターの上に出していたラッピング用のリボンを片付けると、店の看板金魚(おなかの丸いピンポンパール)に餌をあげた。 「プリプリして可愛いなぁ///」 ふと、僕の事を可愛いと言ってくれたあの人のことを思い出した。 (…もう、帰国しちゃったかな…) 捨てきれなくてずっと持っていたメモを眺める。 (一度くらい…電話した方が良かったかな) しゃがみこんで壷の中のピンポンちゃんに心の中で話しかけると、ピンポンちゃんは僕に向かって口を大きく開けてパクパクさせていた。 『いくじなし…』とか言ってんのかな…。 (どうせ僕は勇気の無いいくじなしだよ…) 克哉さんのように淡いゴールドの綺麗なバラの花を眺めて、はぁ…と、一つため息をついた。 「克哉…さん…」 = = = = = = = = = = = = = = = = ホテルから出ると、その近くに新しく出来たらしいビルがあった。 確かその周辺に花屋があった筈。 地図を見ながらたどり着いた花屋を覗いてみたが、それらしい人は見あたらなかった。 「…まぁ、すぐには見つからないよな」 それから駅の方面へ歩いていってそこの角を曲がり、大通りを歩いて行くとまるで映画のセットのような広くて高層な商業施設があった。 「ビルだらけだな…」 (それにしても…遠いな…) 普通このくらい歩けば欧州では郊外の住宅地に出るくらいの距離なのに、向こうにはまだまだ街が続いていた。 花屋もまだ2つか3つぐらいしか回れて無いのに…。 大通りを過ぎた辺りで持ってきた地図を改めて広げると、縮尺の数値を見て東京の広さに気づかされてしまった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |