《MUMEI》 明石 珠緒の御主人様氷室様が僕と同室になってから発毛率が上がった。 ただ、座っているだけで存在感があるのだ。 彼は僕に荷物の片付けや掃除等身の回りの世話をさせた。 とにかく、完璧にこなす努力はした。 眼鏡を綺麗に拭き取ったりもする。 「眼鏡が曇っていたぞ!」 決して氷室様は怒鳴らないが、よく通る声で叱る。 「ごめんなさい」 恐怖により右手の甲が発毛した。 それも構わず氷室様は俺の体を洗面台まで引っ張っり、蛇口を拈る。 「お前が綺麗にならなきゃなあ!」 頭を鷲掴み、顔面に流水を掛けられた。 苦しい。 目や鼻や口から水が引っ切り無しに入って来る。 「ゲホッ ごめ……なさっ」 氷室様は時折、息が吸えるように僕の顔を流水から反らす。 その間はひたすら謝った。 氷室様を怒らせないようにするのは至難の技だ。 「ふ……反省したか?」 でも、決まって氷室様は僕を“仕置き”した後笑っている……気がする。(彼はあまり顔に出さないタイプだと思う) 前へ |次へ |
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