《MUMEI》

『俺サッカー少し知ってるけど知らないなぁ…』



『ハハッ、あんまり活躍しなかったらしいから…』





そして平山さんが会計を終え戻って来た後、俺達は病院を出た。




病室からでも分かっていたがすっかり夜になっていた。





『それじゃ、潮君、惇の事頼んだよ、じゃあ明日病院に現地集合ね?』



『はい』






やはり明日行きつけの病院に改めて行く事になった。





薬の調整とカウンセリングも兼ねてでもある。




『それにしても、はー…、娘を嫁に出す心境ってこんな感じなんだね?惇、いつでも俺のところに帰っておいで?』



『もう!訳わかんねーし!つか恥ずかしいからそういうの止めてよ』



平山さんの腕を叩きながらちょっと怒っている惇。





笑っている平山さん。






この二人の間には今まで積み重ねてきた信頼関係がしっかりとあるようだ。




俺は何だかほっとした。









そして俺達が乗る車が駐車場のゲートをくぐるまで平山さんは見送ってくれた。





『な、今日から俺んち泊まりな?』



『うん、少しの間甘えさせて貰おうかな…』




『惇さえ良ければずっと甘えてくれたって良いんだからな』




『うん…有り難う』






俺の腕に絡みつく惇からは病院の匂いがする。





やっぱ病院ってちょっと苦手だな…、何ってこの独特の匂いがばーちゃん入院してたの思い出すっていうか





……―――




『あ〜!』





突然俺は思い出した!




『しまった…、忘れてた!』




『え?何?』





『――裕斗…、今頃狂った様に病院に向かってる…』




『――裕斗が?』





惇に経緯を話し俺は速攻コンビニの駐車場に入った。





『やべー、病院着いてたらどうしよ』



俺はケツポケットから携帯を出し電源を入れた。



『ね、隆志』


『ん…、』




『今日は二人きりが良い…、裕斗にはもう大丈夫だって言って?』



―――。




『――分かった、そうだよな…』





甘える様に抱きついてくる惇の頭を撫で、俺は携帯を開いた。






『――あ、あの…はい、潮崎です』






運転中という裕斗の代わりに伊藤さんが出た。





もう大丈夫だからと伝えるとその場で裕斗に伝えてくれた。





良かったなあと伊藤さんに本当にしみじみ言われて、




あ〜本当に良かったと改めて自分でも思った。






明日から惇は暫く休みだから今日は来なくても大丈夫だと告げると言っておくと言われた。





まだ横浜辺りで高速の上だと聞いてほっとして俺は携帯を閉じた。

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