《MUMEI》

◆◇◆

「な‥っ」

 彩貴は信じ堅いという眼差しで夜桜を見た。

 だがすぐに視線を後ろに戻す羽目になった。

 大鬼が、又もや暴れ出したからである。

「く‥っ」

 夜桜の瞳の色が、脳裏に焼き付いて離れない。

 それが、術の邪魔をする。

 結界を張り、何とか動きを封じ込めるのが、やっとだった。

「────‥」

傍らの月裔は既に肩で息をしている。

 このまま手加減をしていては埒が明かない。

 だが。

 彩貴は呪符を手にしたまま、大鬼を睨むしかなかった。

(くそっ‥)

 ただ、刻々と時間だけが過ぎてゆく。

◆◇◆

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