《MUMEI》

しかしどうしたものかヒロコにはいささか兄にゲームで勝つ自信が無かった。
それは小さい頃一度だけ兄とゲームで対戦した時あっという間に負けたことがあるからである。確かあれは格闘ゲームだった。その時は悔しくて一日中対戦したのだが、兄のキャラクターの体力を3分の1も減らせなかったのだった。

当時兄には何でも勝つ自信があったのだか、あの時だけはその兄が少しだけかっこよく見えたのを未だ鮮明に覚えている。

「格闘ゲームはダメだなぁ。なんかもっと頭使うのないのかなあ。」と考えていると、ヒロコは肝心なことを思い出した。

「もう対戦できないんだ・・」
そうである。ヒロコの教育に熱心だった両親は兄をできるだけヒロコから遠ざけていた。

ゲームをするなどもっての他である。

「どうしよう」
とりあえず兄の部屋に行ってみよう、そう思いヒロコは部屋を出た。兄がゲームをやりだすとそればかりに集中するのは家族内では有名であった。
だから兄の部屋のゲーム機のディスクホルダーを見れば、今兄がどんなゲームをしているのかが分かるのだ。それさえ分かれば、あとは簡単である。
スコアを競うのだ。

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