《MUMEI》 招待部屋に入ったマネージャーこと月岡さんは、早速失神した。 ある程度のリアクションは予想していたけど、そのリアクションの大きさにオレ達はびっくりした。 オレは有理を他の部屋に移し、月岡さんに軽く説明してから有理を連れて来た。 最初は本当にかわいそうなくらいあせっていた月岡さんだったが、だんだん落ち着きを取り戻し、後は黙ってしまった。 「……そういう訳だからお願いします。オレ達、頼れる大人は月岡さんぐらいしかいないんです」 「……わかった。社長には話しておく。どうするかは社長の手にゆだねられることになるよ」 月岡さんの様子はあまりノリ気ではない感じだった。それは有理も感じたらしい。 「……月岡さん的にはどうなんですか?」 「ん?……賛成だよ」 「そんな感じには見えないんですけど」 「オレもです」 「賛成だよ。……でもふたり共頼れる大人はオレだけって言ってくれてすごく嬉しい。じゃあなんでもっと早く言ってくれなかったんだ?唯一頼れる大人なのに初めて出会った時からオレを騙してるじゃないか」 「騙して…ってそんなつもりじゃ」 「オレ達両親亡くなったのが結構早くて、甘え方がわからなくて……」 そこで月岡さんはハッとなった。 そしてうつむき、声を絞り出すようにして言った。 「……すまない。本当に……すまない。忘れてくれ」 「大丈夫です」 「……月岡さんだけが頼れる存在って言ったこと、嘘じゃありませんから」 「よろしくお願いします」 前へ |次へ |
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