《MUMEI》

◆◇◆

「‥‥‥‥‥‥‥」

 もうこれ以上時間を持て余す訳にはいかない。

 皆、それは分かっていた。

 だが実際は、自分達が持ち堪えるだけで精一杯なのである。

 夜桜は朦朧とする意識の中、大鬼に心の中で呼び掛け続けていた。

 もう今度こそ本当に、声は出なくなっていた為、念じるしかなかったのだ。

(‥‥‥聞こえるか‥)

 一呼吸分の間をおいて、低い声が答えた。

(まだ意識があるのか)

 夜桜は僅かに苦笑した。

(‥こうなっている以上‥いつまで持つかは‥分からんがな‥)

(何故奴等を咎める)

(‥お前を‥傷付けたく無いから‥)

(人が妖の味方をするというのか‥)

(‥ああ‥。でなければ‥‥、お前は‥とっくに‥消されている‥)

◆◇◆

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