《MUMEI》 軽トラ二人は旧住宅街の外れまで来ると立ち止まった。 ミユウが時間を確認する。 「もうちょっと、かな」 そう言うとミユウは周りを見渡した。 人気のない、寂しい街並みだ。 かつて大勢の人が住んでいたとは思えない。 もう何年かすると、ここもすべて取り壊されるのだろう。 隣を見ると、同じようにミライがぼんやりとどこかを見ていた。 何か話しかけようとミユウが口を開いた時、微かに音が聞こえてきた。 目を細めて道の向こうを見る。 すると街の奥から軽トラックが走ってくるのが見えた。 「来た来た」 ミユウは呟くと道の真ん中に立ち、大きく両手を広げる。 軽トラはクラクションを鳴らしてくるが、それでもミユウはどこうとしない。 それどころか大きく両手を振って軽トラを止めた。 「なんなんだよ、危ないだろうが!」 運転席から顔を覗かせ怒鳴ったのは、どこかの会社の作業服を着た中年の男だった。 ミユウはニヤニヤと笑みを浮かべて運転席に近づいていく。 「なんだよ、おまえ」 男は気味悪そうに眉を寄せた。 前へ |次へ |
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