《MUMEI》
ヒッチハイク
「ちょっと乗せてってくれない?」
「はあ? なんで俺が……。仕事中なんだ。邪魔すんな」
俺は片手を振ってシッシッとミユウを追い払おうとする。
するとミユウは携帯端末を取り出しながら「へー、お仕事ねえ」と笑った。
「そうだ。忙しいんだよ。歩いて帰りな」
「ふーん。歩いてもいいけどさ。そしたら、これ、マスコミに売っちゃおうかな〜」
言いながらミユウは端末を男に見せた。
途端、男の顔色が変わる。
 そこには、男が明らかにゴミと思われる物を空き地に捨てている場面が写し出されていた。
「これ、不法投棄だよね。重罪だよ? いいのかな〜」
男は苦い表情を浮かべて端末とミユウを見比べた。
「……わかった。乗せてってやるよ」
「最初からそうすりゃいいのよ」
ミユウは笑って言うと、離れた場所で様子を見守っていたミライを呼び寄せた。
「乗せてったら、その写真、消してくれるんだろうな?」
運転席のすぐ隣に乗り込んだミユウに男は聞いた。
「もちろん。別にわたしは環境保護団体の一員でもないしね。乗せてくれれば、文句はいわない」
「まさか、ヒッチハイクするためだけのネタか?」
男の呆れたような言葉にミユウは笑って答えながら、ミライが乗り込むのを待つ。

 軽トラといえど、全席に三人座れるソファーシートなので、余裕をもって座れることができた。
「じゃ、行くぞ」
男がアクセルを踏み込んだ。
車は静かに進み始め、旧住宅街を後にした。

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