《MUMEI》 蕎麦茶を持ってきた律子さんに、私は『ざるそば二つと天ぷらの盛り合わせ一つお願いします』と注文した。 「かしこまりました」 ペコリと頭を下げて、律子さんは厨房に入っていった。 「ぶあいそうな人だね」 (確かに…) 小声で私に囁くせいこちゃんに、私は苦笑した。 一生懸命頑張っているのはわかるが、『赤岩』の接客としては、固すぎるし、笑顔もあまりなかった。 (OLさんらしいし、仕方ないわよね) そして、私には接客態度の他に、もう一つ気になる事があった。 数分後。 「いらっしゃい、蝶子ちゃん! 珍しいね、えっと…」 双子の見分けがつかない勇さんに向かって、せいこちゃんは『やこです』と言った。 「あ、そうそう!やこちゃんだ!」 「勇さん、からかわれてますよ。 せいこちゃんです」 「え?」 私の言葉に勇さんが驚くと、せいこちゃんが悪戯っぽく笑った。 「ひどいな〜、あ、俺達も一緒に食べていい?」 『いい』と言う前に、勇さんは明らかに四人分の食事を置いていく。 「私達が頼んだの、ざるそば二つと天ぷら一つだけなんですけど…」 「サービスサービス」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |