《MUMEI》

「蝶子ちゃんは、俊彦の彼女で、せいこちゃんは『クローバー』の咲子さんの娘で蝶子ちゃんのいとこ。

で、こっちが俺の彼女のりっちゃん」


それだけ言うと、勇さんは『いただきます』と言ってざるそばを食べ始めた。


「おいしいうちに、食べよう」


「「…」」


いろいろ言いたい事はお互いあったが、せいこちゃんの言葉に私と律子さんは頷いて、食べ始めた。


「勇、せいこもう、アイス」


「もうか〜? よしよし。
あ、二人は?」


「「ま、まだ…」」


(二人とも、早っ…)


私も食べるのは早い方だが、勇さんとせいこちゃんには敵わなかった。


チラッと見ると、私よりも律子さんはかなり焦っていた。


律子さんは食べる速度は、多分、遅くはない。


ただ…周りが、早すぎるのだ。


それも、『飲食店で働く者』と『会社勤めのOL』の違いだろうと、私は感じていた。


「無理しない方がいいですよ。こういうの、慣れですから」


私が囁くと、律子さんはホッとしたように、手を止めた。


「ありがとう、ございます」


「い、いえ…あの、私、年下だから、敬語はいいですよ」


普段敬語を使われてないから私は焦った。

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