《MUMEI》 「…ありがとう」 律子さんは、そんな私を見てクスリと笑った。 (いつもこうなら、きっと『看板娘』になるだろうな…) 私がそんな事を考えていると… 「さすが蝶子ちゃん。りっちゃんともう馴染むなんて。 学生時代ちっとも馴染めなかった俺とは大違いだね」 蕎麦アイスを二つ持った勇さんが現れた。 勇さんは、そのうちの一つをせいこちゃんに渡した。 「蝶子ちゃんは?」 「すみません、…入りそうもないです」 私が言うと、隣でまだ食べている律子さんも『私も…』と小声で言った。 「じゃあ、おみやげにかりんとう持っていきなよ。 今、兄貴が作ってるから」 勇さんの言葉に、私は頷いた。 「あの、昔、仲良くなかったんですか?」 律子さんより先に食べ終わった私は、勇さんに質問した。 「うん。俺、りっちゃん恐かったし」 ゴホゴホッ 「だ、大丈夫ですか?」 慌てて反論しようとしたのか、律子さんがむせたので、私は背中をさすった。 「…大丈夫。あんたが馬鹿ばっかりするからでしょ」 涙目になりながら、律子さんは言った。 「でも、りっちゃん同じ馬鹿やってる祐介はスルーだったじゃん」 前へ |次へ |
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