《MUMEI》

「そんなの、勇がすきだからに決まってるでしょ。
わかんなかったの?」


そう言って、せいこちゃんは蕎麦アイスを口に運んだ。


「…小学生のせいこちゃんにわかって、中学三年間気付かなかった俺って…」


落ち込む勇さんに、『…私も好きって自覚したの中学卒業してからだし』と律子さんが言った。


(やこちゃんもそうだけど、今時の小学生って大人っぽいなぁ…)


私は感心しながらせいこちゃんを見つめた。


「…付き合い始めたの、同級会からなんですよね?」

「「はい、すみません…」」


「い、いや別に謝らなくても…そ、それより、さっきの勇さんの説明で、私とせいこちゃんの事、わかりました?」


私が慌てて話題を変えると、律子さんは首を横に振った。


そして、『もう無理』と言って律子さんが残した分を、勇さんが素早く胃袋におさめた。


(あれじゃ、無理よね)


「せいこちゃん、ちゃんと自己紹介しようか」


私の言葉に、アイスを食べ終えたせいこちゃんは頷いた。


そして、私達が詳しい自己紹介をすると、律子さんはようやく、私達の事を理解してくれた。


「ねぇ、蝶子ちゃん。他の人達の事も教えてくれない?」

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