《MUMEI》

「いいですけど…今は、ちょっと…」


私はチラッとせいこちゃんを見た。


『もう帰りたい』


せいこちゃんの顔がそう言っているのがわかったので、私は律子さんと携帯番号とメルアドを交換することにした。


「あの、それ…」


私が気になったのは、携帯を操作する律子さんの爪に貼られた絆創膏だった。


「バイトするようになったら、よく割れちゃって」


律子さんが苦笑した。


「お袋も、手荒れはどうにかなるけど爪まではってよく言ってるよ。
俺達男は平気なんだけどね」


「そうなんですか…」


「ママは手入れしてるから大丈夫だよ」


せいこちゃんが口を開いた。


(爪…手入れ…)


「そっか、じゃあ、咲子さんに…」


「待って下さい」


そして、私は律子さんと、勇さんの母親にある提案をした。


それから、かりんとうをもらうときに、悟さんにいくつか質問した。


「じゃあ、また連絡します」


そう言って、私はせいこちゃんと一緒に『赤岩』を後にした。


帰ってきてから、私は『クローバー』の仕事に戻り、咲子さんに報告を済ませ…

理美さんに連絡して、『ある事』を提案した。

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