《MUMEI》

◆◇◆

 ぽてっ。

 真っ先に夜桜に飛び付いたのは、黒手毬である。

 続いて、雪兎、琥鬼、風牙も群がる。

 狐叉だけはなかなか近付こうとしない。

 四匹はともかく、自分の妖気で負担がかかるのなら近付くべきではないのでは、という考えが彼女の心に浮かんでいた。

「狐叉」

 夜桜に名を呼ばれ、七尾はぴくりと耳を動かす。

「来ないか、お前も」

 狐叉は喜ばしく思いつつも、ためらっていた。

「大丈夫なのか」

「ああ」

 その夜桜の微笑に、狐叉は僅かな違和感を感じずにはいられなかった。

 それでも夜桜がしきりに誘ってくるので、狐叉はなるべく妖気を制御しつつ彼女に近付いた。

◆◇◆

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