《MUMEI》

『…本気にするよ?』



『本気にしてくれなきゃ困る…』







エンジンの音、







いつの間にか降りだした少しの雨の音。





『俺は惇のモノだ……、
不安になるな…、
裕斗は俺にとって惇のダチでしかない、それ以上にも…


以下にもならない』







自分自身にも言い聞かせる様、俺は言葉を繋ぐ。








―――もう…後戻りは出来ない…。





…なんだか不安で怖くて堪らない。





『お願い、俺だけ見て…俺だけ…、』







それから暫くして惇のマンションの近くのコインパーキングまで着いた。




いつの間にか雨はやんだが空はどんよりとしている。





数日分の着替えとPCを取りに惇のマンションに来たのだ。





『待ってる?』




『いや、一緒に行くつもりでここ停めたんだし…、つか少しでも離れたくないだろ?』



『――うん』




俺はエンジンを切り、煙草をポケットに突っ込んで車から出た。




そして惇も後に続く。




俺達は誰も通らない事を良いことに、自然と指先を絡め合い歩きだした。





『胸苦しくないか?』




『うん平気…、ね、隆志』


『ん』





『――隆志のマンションに行ったら…、俺…めっちゃ抱かれたい』




『ハハッ…うん…、俺も抱きたい』




『いっぱいキスもしたい』



『随分積極的だな〜、そんな可愛い事言ってると今直ぐ食べちゃうぞ?』




『――食べてよ』









ふとお互いに立ち止まる。




二人で軽く周囲を見渡し、誰もいない事を確認して……。





同時に同じ仕草をしたのがなんだかおかしくて、少し笑ってしまうと惇もクスクス笑いだした。





『笑うな、キス出来ない』


『隆志だって笑ってるよ!』



構わずぐいと背中と腰を抱き寄せると惇は顔を上げ、緩く瞼を閉じた。







俺達は、俺が惇の気持ちを受けいれたこの外灯の下で、






唇を重ね合いだした。




そして重ねるだけのキスから更に深く進もうとしたその時



『惇、仕事終わったのか?』






ゆっくりとその声がする方を見ると…




『あに…き……』





惇がそう言った。






雨がまた降ってきた。

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