《MUMEI》

◆◇◆

 夜桜が傍らの七尾の背をそっと撫でてやると、彼女は目を細めた。

 ゆらり、と尾を振る。

「夜桜」

 彩貴だ。

「ああ‥分かっている」

 夜桜は徐に狐叉から手を離すと、彩貴に支えられるようにしながら寝床に戻った。

 彩貴が側から離れようとしない為、夜桜は彼を話し相手にせざるを得なかった。

「彩貴‥」

「どうした」

「すまん、無理を言って‥」

 夜桜が言うと、彩貴は未だ固い表現を変えずに、気分はどうだ、と尋ねてきた。

 夜桜が、少し楽だ、と答えると、彩貴はただ、そうか、と一言、呟くように言った。

◆◇◆

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