《MUMEI》
十三夜 その心、無きにしも非ず
◆◇◆

「‥どうした」

 彩貴は自分の袂を掴んでいる白い手を見るなり、すぐさまその姫に視線を戻した。

 夜桜は僅かに哀愁を帯びた眼を彩貴に向ける。

「いてくれないか、此所に‥」

「‥‥‥?」

 彩貴は不思議に思わずにはいられなかった。

 彼女が自分を引き止め、傍らにいる事を望むなど、有り得なかった。

 だが夜桜は手を放さない。

「頼む‥」

「‥‥分かった」

 彩貴は答えつつ、その手を握った。

◆◇◆

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