《MUMEI》 「も〜、蝶子は何て頭がいいんだ!しかも可愛いし!」 「と、俊彦、離して…」 私は、俊彦の腕の中で訴えた。 『見てるだけ』と言ったのに、俊彦はどさくさに紛れて私に抱きついてきたのだ。 (ここからが本番、なのに…) 私が暴れると、『もう、離れてやれよ』と勇さんが近付いた。 そして、『苦しそうですよ』と律子さんが言った時… 「どうしたの? その手」 俊彦が、律子さんの絆創膏に気付いた。 (よし、この流れで…) 「そ、そういえば、幸子(さちこ)さんも、爪割れちゃうんですよね」 「え? えぇ…」 突然話をふられて、勇さんの母親の幸子さんは首を傾げた。 「じゃあ、理美ちゃんに何とかしてもらえば? 彼女、爪に関してはプロだし」 咲子さんが打ち合わせ通りのセリフを言った。 「任せて下さい!」 「じゃあ、片付けますから、…いい加減、離れて、俊彦!」 「え〜」 「パフェ、味見して、ね?」 私は見上げながら甘えるように言った。 「仕方ないな〜」 そして、やっと俊彦は離れた。 「美味しいよ〜、蝶子」 「はいはい」 前へ |次へ |
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