《MUMEI》

私の視線は俊彦ではなく、理美さんに移っていた。


理美さんは、道具を取り出し、幸子さんの爪の形を整えていく。


そして…


「マッサージも出来るの?」


驚く幸子さんに、理美さんは『手だけですけど…』と照れながら、マッサージを行い…


仕上げに、爪を保護する為に、透明のネイルを塗った。


それから、律子さんには同様の処置を行った後に、薄いピンクのネイルを塗った。


「オシャレにやるだけじゃないのね」


感心せる幸子さんに、咲子さんが『私もやってるおかげで、だいぶいいですよ』と、手を見せた。


咲子さんの手は、こまめにハンドクリームと、ネイルを塗っているから、とても綺麗だった。


「あの…私も、お店、手伝った方がいいんでしょうか?」


場が和んだところで、理美さんは恐る恐る幸子さんに質問した。


実は私は、その答えを悟さんから聞いていた。


「そうねぇ…あなた…」


「は、はい」


理美さんは背筋を伸ばした。


幸子さんは、遠慮がちに…

「マニュアル車や、原付って運転できる?
実は、出前の人手が一番足りないのよ」


と言った。


普通、女の子は運転が苦手だが…

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