《MUMEI》 工藤家にお泊まり理美さんは何度もお礼を言いながら、悟さんや『赤岩』の関係者達と一緒に帰っていった。 (良かった…) 「これからは、相談役は蝶子ちゃんの役目かもね」 「そ…」 「それは困る!咲子さんがやってよ!」 私が反論する前に俊彦が悲鳴を上げた。 「一緒にいる時間が減るから?」 「それ以外に何があるんだよ!今日だって、今からじゃ、蝶子家に連れてけないし!」 俊彦が言うように、今から行けば、本当に、睡眠をとる為に寝る時間しか無かった。 すると、咲子さんがとんでもない事を言った。 「蝶子ちゃんの部屋に泊まればいいじゃない」 ーと。 「え」 私は固まった。 (泊ま…る?) チラッと俊彦の顔を見ると、… 俊彦の顔が、ものすごく…キラキラというより、ギラギラと輝いていた。 「い、いいんですか?」 「蝶子がいいならね」 ガシッ! 「い、いいいい?」 (俊彦、恐い…) その時の俊彦は、私には狼に見えた。 「何も、…しない?」 「無理」 「無理でしょ」 「じゃあ、ダメ」 私の言葉に俊彦がガクッと落ち込んだ。 「私、先に寝てるから」 前へ |次へ |
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