《MUMEI》 ◆◇◆ 丁度夜桜は食欲をなくしていた為、彩貴はこの見舞が嬉しかった。 夜桜は今朝も白湯を飲んだきり、この刻まで何も飲まず食わずだったのだ。 「これなら‥‥食べられるか」 「‥‥‥?」 「月裔からだ。琥鬼が渡しに来た」 「そうか‥‥‥」 夜桜は徐に体を起こした。 幾分良くなっているように感じる。 「───────」 彼女は干し杏を手のひらに乗せてもらうと、橙の色を見つめる。 口に含むと、甘酸っぱい風味が広がった。 (久し振りだな‥) 干し杏は夜桜の気に入りだった。 月裔は彩貴からその事を聞いていた為、市へ赴いたのだった。 だが、何故琥鬼に預けたのだろうか。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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