《MUMEI》

◆◇◆

「どうかしたか」

「ああ、いや‥」

 不意を突かれ、夜桜は些かうろたえた。

 気を落ち着かせようともう一つ干し杏を口に含む。

 彩貴はその様子に微笑を浮かべていた。

 夜桜は生まれつき、峠を越えれば回復は早い。

 明日には結界を解いてまた狐叉達に会わせてやる事が出来そうだ、と彼は思った。

「彩貴」

「‥‥っ?」

 彩貴が見ると、夜桜は嬉しそうな表情をしている。

「変わったな、最近──」

 彩貴はきょとんとした。

 自分では、全くと言っていい程そのような事は思っていなかったのである。

◆◇◆

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