《MUMEI》

授業が終わって氷室様は静かに帰りの仕度を始めていた。

(聞けない……氷室様にお友達ですかだなんて。)

でも友達って言わなくてもわかるものじゃない?


分かったぞ、魂で、拳で伝えてくれていたのか…………!
成る程、だから僕を殴ってくれていたんだ!

「タマ!」

僕のことをこんなに構ってくれているんだ、きっとそうに違いない。

「はい、氷室様!」

なんか、楽しくなってきたよ。有り難う母さん!

「どうした?ニヤニヤして」

氷室様に気付かれるほど僕は顔に出していたのか。

「いえ、
……そういえば氷室様は僕に首輪を下さいましたが僕は何を氷室様に渡せば良いでしょうか。
僕、今お金が無くて、茎わかめしかないのですが要りますか?」

「封が開いているぞ…………食べたのか?」

氷室様が鋭い目付きをする、直感で気付いた。






    怒らせた!

「いえ……あのごめんなさい!」

殴ったりするときの氷室様は怖い、この間は鬼だったが最近は閻魔大王に昇格している。

「主人以外から物を食べるなと命じたよな?」

そうだった、朝晩は食堂なので自分の手で食べることを許可されていたし(ただし『よし』と言われてから)、茎わかめは氷室様に命じられる前から持っていたのですっかり忘れていた。

「ごめんなさい、出過ぎた真似を!」

氷室様はこんなに冷たい目付きをしているんだきっと僕なんかなんとも思っていないさ。
一人で舞い上がって馬鹿みたいだ。

「分かっているじゃないか。主人の命令に背くペットは躾が必要だよな?」

氷室様は僕を屋上まで引きずって行った。



怖い怖い怖い……母さん!

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