《MUMEI》





「急に仕事なくなったんですよ」




そう言いながら俺はグラスに麦茶を注ぐ。



「芸能界って大変だなあ、そーやって簡単に振り回されるんだー?」







惇の兄貴…拓海さんは昨日惇が作ったエビピラフにパクついている。





――つか…



話と違う。





…今のとこ普通な人。







つか、キスしてるとこ見られたのに何でもない態度とられてるし…。






「どうぞ」





「有り難う、悪いね」




拓海さんは笑顔でグラスを受け取ると、麦茶をごくごく美味しそうに飲んだ。






本当、顔マジ惇そっくりだ。

ちょっと派手さのない、素朴な惇って感じ…?



ガチャ…





「先ゴメン、次兄貴入る?」




髪をバスタオルで拭きながら惇が脱衣所から出てきた。




「いや、潮崎さん先だろ、雨に濡れたし…、どうぞ先に入ってきて?」





また優しく微笑まれて…なんだか拍子抜けする。





「じゃあお先に…すみません」

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