《MUMEI》

◆◇◆

 夜が明け、卯の刻を回った。

「姫ー」

 ふいに、おどけたような声がした。

 妙な重みを感じ夜桜が薄目を開けると、懐の上に妖が乗っている事に気付いた。

「姫、起きたかー?」

 そう話しかけた雪兎の首根っこを、彩貴がすかさず、むんずと掴んだ。

「病み上がりに何をしている」

「うわあ、彩貴‥!?」

 その手から逃れようとじたばたともがく雪兎。

「はーなーせー!!」

 すると夜桜が苦笑した。

「彩貴、放してやってくれ」

「だがこいつは‥」

「私は嬉しかったがな」

「‥?」

 彩貴がきょとんとすると、夜桜は微笑した。

◆◇◆

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