《MUMEI》

◆◇◆

 やっとの事で彩貴の手から逃れた雪兎が夜桜に抱かれたまま前脚で長く白い耳を掻いていると、廊下から聞き慣れた妖達の声がした。

「雪兎ー狡いぞー?」

「狡いぞー?」

 琥鬼と風牙が転がり込んで来た。

 そして、夜桜に飛び付く。

 夜桜は小さく笑うと、二匹を撫でてやる。

「お前達も来てくれたのか」

「狐叉と黒手毬もいるぞー?」

 その言葉に夜桜が手前を見る。

「───────」

 視線の先には、背に黒手毬を乗せた七尾が佇んでいた。

◆◇◆

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