《MUMEI》

「…じゃあ、そろそろ俺は帰ります」



そう言って、清水さんは立ち上がった。



「どうもありがとうね、配達まで頼んじゃって〜」



少しお酒を飲んだ椎名ママは、上機嫌に答える。



「…はは、困った時はお互い様!!
―…そうだ、みつる!!」


「はい!」



いきなり名前を呼ばれて、弾かれたように答えた。



「…お前、その―…あれだ、練習―…」



目を泳がせながら言う清水さんに、私は笑って答えた。



「明日から行きます!!
…勝手に休んで、すみませんでした。
―…あの、ひょっとすると、少し―…、いや、かなり鈍ってると思うんですけど…
よろしくお願いします!!」



私が頭を下げると、



「いや、練習に来る来ないは好きにすればいいんだよ。
…ただ、初めてのことだったから、ちょっとばかし心配になってな」



清水さんはそう言って、頭を掻いた。



―…そっか、だからわざわざ来てくれたんだ―…



椎名くん、愛されてるんだね。



「…じゃあ、すみれさん、みつる、お休みなさい」


「お休みなさい!!」


「おやすみぃ〜」



清水さんは、大きな体をのっそりと揺らしながら、帰って行った。



スタミナ丼は、ものすごく美味しかった。

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