《MUMEI》
秋色パンプス
八月三十日。


明日で、八月も終わる。


それは、同時に多くの学生達の夏休みが終わる日でもあった。


…というわけで。


「歌穂子ちゃんバイト終了と、紅白コンビに奇跡が起きたのを祝して…」


「「奇跡って言うな!彼女が出来たってちゃんと言え!」」


春樹さんの言葉に、祐介さんと勇さんがツッコミを入れた。


「まぁまぁ、あと、私の婚約記念も入れて…

乾杯!」


愛理さんが叫ぶと、三人の男性陣と、キョトンとしている歌穂子さんと律子さんを除いた全員が『乾杯』と声を揃えて言った。


(いつものパターンなんだけど、二人は戸惑うよね)

私はいつも通り、パーティーの料理を作る為に『クローバー』の厨房に入ろうとした。


「「待って!」」


「はい?」


歌穂子さんと律子さんに呼び止められ、私は足を止めて振り返った。


「「お願い、側にいて!」」


「え? でも…」


私は祐介さんと勇さんを見つめた。


「「俺達じゃ頼りなくて、商店街の連中は、迫力あってまだ恐いんだってさ」」

そう言って、二人は苦笑した。


(でもな…)


迷う私の肩を、悟さんが叩いた。


そして、無言で厨房に入っていく。

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