《MUMEI》 白と黒の模様が、 炎の向こう側から覗いている。 オレは深呼吸をし、 シーツにくるんだ母の衣類を燃え上がるその中に投げ込んだ。 繊維は溶け、目の前で小さく萎んでゆく。 オレは手を合わせ、透き通る炎に思いを宿す。 1つ、 また1つあなたの元へ。 山積みにされた服に、新しいものは少ない。 胸が締め付けられ、気持ちが抑えられなくなる。 母は、自分を犠牲にしてきた。 これは、 何も残せなかったオレの、せめてもの餞。 あなたを失った時から生まれ落ちた、 全ての激情なる日々と思いよ、 燃えつきてくれ。 木々が揺れ、花束が青い炎に包まれる。 服は萎み続け、靴は金具を残し消えていく。 オレが産まれる前からいたであろう、 母の面影深い人形達が静かに還る。 母の場所へと還っていく。 舞い上がる風は幾度となく、 この身を目掛けて灰を降らせ、 まるで、 母が待つあの日に降りそそいだ雪の様であった。 燃え上がる炎が空を焦がす。 雪は静かに、降り続けた。 前へ |次へ |
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