《MUMEI》 立ち尽くすオレの足元で、 荒々しく炎が燃え上がる。 黒いジーンズが熱を帯び、チリチリと肌を焦がす。 誰かには在りふれた午後なのだろう。 この瞬間、 誰かは素通りし、 誰かはオレの居る風景にさえ気がつきもしない。 それでいい。 はじまりの日は、やがて終わるのだから。 ジーンズの膝下が熱でえんじ色に染まる。 彼女にもらった下ろし立てのスニーカーが、 砂ぼこりで汚れてゆく。 白黒模様の野良猫だけが、 オレを一瞥し通り過ぎて行った。 前へ |次へ |
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