《MUMEI》

1月2日。

「あと、15分くらいで着きそうだ。」

電話越しの父がそう告げると、オレは携帯を片手に部屋の中をウロウロとしながら準備にとりかかった。

この日、

1日遅れの正月を実家で過ごす為、オレは父の迎えを部屋で待っていた。

手持ちぶさたで、昨日届いた母からの年賀状を何気なく読み返していると、
「今年は良い年になる」と、相変わらずの走り書きで、何やら色々とコメントが書いてあった。
占いや風水が好きな母がまた影響されてと、オレは苦笑しながらも少し心が和んでいた。

予定の時間よりも早く、父の車は到着した。
新年だし、皆で祖父母のお墓参りをしたいと言い出したのはオレ。その後は、実家でお決まりの雑煮を食べ、正月の雰囲気に染まりながらスローな休日を過ごすつもりだった。

祖父が亡くなり、4人の正月が始まる。

車内で待つ父と母、兄に新年の挨拶をすると、乗り慣れた車が見慣れた風景を突き進む。
体調の良い兄が家族で行った海水浴の思い出を話し始め、父も話しに便乗し、母がその話しで笑う。

新しい季節の風を切り、車は前へ前へと進んで行く。

新しい運命を乗せ。

穏やかな時間に身を任せ、帰らない時間を乗せながら。

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