《MUMEI》

良く晴れた日だった。

起きて間もないオレは、流れる風景に永遠を見ていた。


良く晴れた日だった。

父が、兄が、
笑顔で会話をするその横顔に、オレは永遠の時間を感じていた。


良く晴れた日だった。

叔母と行ったコンサートの話しを、何度も何度も繰り返す母の、子供の様な笑顔が永遠の象徴の様に輝いていた。

良く晴れた日だった。

車内に射し込む柔らかい陽射しが、永遠に続く様な午後の、その永遠に続く運命の片鱗を縁取った。


良く晴れた日だった。

そこには紛れもなく、いつもと変わらぬ家族の存在があった。


良く晴れた日だった。

起きて間もないオレには、最後の瞬間など分からなかった。


良く晴れた日だった。

あの日、 永遠 は1つの言葉となった。


良く晴れた日だった。

変わらぬ午後は、オレの記憶の中で意味を与えられ、
変わらぬ午後は、オレが家族と過ごした最後の日となった。


良く晴れた日、

母は、最後まで笑顔を絶やさなかった。

それは、
いつも通りの午後。

静寂の向こう、白い雲が悠然と流れ、

空は果てしなく青かった。

1つの迷いもない青色が、母と生きた時代の全てを彩った。

(了)

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